従来のエレクトロニクスデバイスでは、室温(環境熱雑音)に対して十分に高いエネルギーを投入することで、高速かつ正確な演算を実現している。これに対して生体系の行う情報処理は、熱雑音(ゆらぎ)を巧妙に活用することによって、処理速度は低速であるが、熱雑音と同レベルの超低消費エネルギーで確率的に動作している。
この 「ゆらぎ」情報処理の鍵は環境からの 「熱」エネルギーを活用する点にある。これまで「厄介者」であった「環境中の雑音(ゆらぎ)エネルギー」を生かす逆転の発想による生体に学んだ超低消費電力デバイスの実現が期待される。
 当研究室では、次世代エレクトロニクスの基幹材料として期待される強相関系物質を対象として、磁性体・強誘電体人工格子(スピングラス、リラクサー、光磁性体)の創製を行い、相共存と「ゆらぎ」が引起す新規物性に関する基礎研究を行っています。

「ゆらぎ」を利用した新機能素子の開発

「ゆらぎ」マグノニクスと脳機能模倣素子 M. Adachi et al., Appl. Phys. Exp. 8, 043002 (2015).

クラスターグラスに特徴的な記憶現象:メモリ効果(直前の熱履歴を記憶)

鉄酸化物薄膜の室温巨大光磁性

人工格子法により、原子レベルで磁気相関を制御(スピンフラストレーション&ランダムネスの導入)

・室温を遥かに超えるスピン凍結温度の実現
・光によるグラスの融解(光磁性)

・1/1000000000000000秒レベルの超高速で磁性が変化

従来の熱書込み式メモリに代わる光直接書込み式(フォトンモード)メモリへの応用へ

ナノ構造制御によるリラクサー現象の発現

  • レーザーMBE法を用いた人工格子作製により、原子レベルで電気双極子相互作用を制御
  • 秩序度の低下に伴い、リラクサー相が発現
  • 強誘電体BaTiO3の100倍もの誘電率を実現

リラクサー発現機構の完全解明に向けて重要となる基礎的知見が得られた

双極子ゆらぎをもちいた脳型デバイス応用へ